塩の殺菌作用は有名だが、効果を得ようとすると「死ぬほど痛い」という副作用がある。だが、同じくらい効果的で痛みも少ない天然の治療薬が、実は砂糖だ。多剤耐性菌などの発生で抗生物質を初めとする最新の医薬も万能ではなくなりつつあるいま、何千年も前から民間治療で使われてきた古くて新しい薬が、先進国の医療シーンでも注目され始めた。
塩の治癒能力については誰でも少しは知っている。残念なのは、小さな副作用があることだ。なにしろ、死にそうなほど痛いのである。
しかし、傷口を消毒するために、より痛みが少なく、同じくらい効果的で、天然の物質で、コストも低い別の選択肢が存在する。それは、よく考えるとほとんど塩の反対の存在に思える。砂糖のことだ。
栄養の面では、しばしば悪魔呼ばわりされる物質だが、最近では潰瘍、切り傷、裂傷などを治療する潜在能力があると話題になっている。発展途上国では貴重な役割を果たすだろう。医薬や現代的な治療法が、一般の人々の手の届かないものであることが多いからだ。
さらに、公衆衛生システムがもっと発展した地域でも重宝されるだろう。抗生物質への耐性をもつ細菌が発生するなどし、傷口や感染症の治療において、新たに非常に重要な問題が生じているからだ。
これが、英ウルヴァーハンプトン大学の成人看護学の教員、モーゼス・ムランドゥの意見である。治療における砂糖の有効性について研究を行い、最近「Journal of Wound Care Awards 2018」で表彰された。
古くからあり、いまも使われている治療法
一方、傷の治療に砂糖を使うのは新しいことではない。むしろ多くの文化で、最古の伝統医療として普及した治療法のひとつだ。イタリアでも古代から塩やハチミツとともに用いられてきた。殺菌効果のある湿布をつくり、汚れた傷口や切り傷などあらゆる種類の裂傷を消毒するためだ。
ムランドゥがBBCに語っているように、彼の出身国ジンバブエでも最も利用されている民間療法のひとつだという。家庭では(可能なときには)最も経済的な塩の代替選択肢として用いられている。