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奄美大島(鹿児島県)出身で情報機関に在籍経験のある知人男性からこんな連絡が入った。
「奄美が中国にのみ込まれそうだ」
早速、奄美に飛んだ。舞台は、同島西端に位置する瀬戸内町西古見(にしこみ)集落の池堂地区。古仁屋(こにや)港から大島海峡沿いに約38キロの場所で、人口わずか35人だが、沖には3島が連なる小島(三連立神=さんれんたちがみ)や200メートル続くサンゴの石垣、白い砂浜など観光資源に恵まれている。
ことの発端は、国土交通省が昨年8月に発表した「島嶼(とうしょ)部における大型クルーズ船の寄港地開発に関する調査結果」だ。このなかで瀬戸内町は、池堂地区をはじめ3カ所が候補地として挙げられた。排水量22万トン級の大型クルーズ船が寄港する計画が一気に表面化。しかも、町は候補地の一つ、西古見集落への誘致に向け動き出したのだ。
大型クルーズ船の寄港計画は平成28年にもあった。米大手クルーズ会社「ロイヤル・カリビアン・クルーズ」が本島北部の龍郷(たつごう)町に同規模のクルーズ船で、乗客、乗組員合わせて7千人を超える中国人を来島させる計画を持ちかけたのだ。町は拒否し、次いで打診された瀬戸内町も断り計画は立ち消えになっていた。
米資本の計画を断ったはずの瀬戸内町で再び動き出した寄港計画に、「7千人の中国人が押し寄せるのではないか」といった不安が広がっている。
集落に住む年配の女性は「西古見は観光にはいいが、店は1軒しかなく食堂もない。道も狭い。1度に7千人も来て何をするのか。受け入れには大がかりな再開発が必要で環境が破壊される」と、とまどいを隠さない。