「正論大賞」東京講演会

新保祐司氏「明治の精神の復活と保持を」 講演要旨

「正論大賞」受賞記念東京講演会で講演する新保祐司氏=1日午後、東京都千代田区(鴨川一也撮影)
「正論大賞」受賞記念東京講演会で講演する新保祐司氏=1日午後、東京都千代田区(鴨川一也撮影)

 第33回「正論大賞」(フジサンケイグループ主催)に輝いた文芸批評家、新保祐司氏(64)の受賞記念東京講演会「日本人は日本文明を保持する意志があるか」が1日、東京都千代田区の日本プレスセンタービルで開かれた。講演の要旨は次の通り。

 20世紀英国の歴史家・トインビーは『歴史の研究』で、厳しい自然や強大な国家の挑戦に対して応戦する意志を持たない人間たちのもとで文明は生まれなかった、と説いている。応戦する意志、精神的エネルギーが枯渇すれば、文明は衰退し解体する運命にある。日本人はこのことを十分に心しなければならない。

 米国の国際政治学者・ハンチントンは『文明の衝突』で、日本が一国一文明であることを述べているが、これは日本の栄光でもあり孤立でもある。今後の日本人に、この悲劇的な栄光を保持し続ける精神的エネルギーがあるかどうかが今、問われている。

 今年は明治維新150年。明治の日本は、西洋文明と遭遇し、それに果敢に応戦した。いかにして日本人は西洋文明に対峙(たいじ)し、日本文明を保持しえたのか。明治の精神を、壮大な気風を持って回想しなければならない。自らの民族の歴史を回想する力を失うことはトインビー的にいえば文明の衰退の兆候なのだ。

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