「談ス/NUDE」 ナマな言葉と身体ぶつける

横浜美術館1階の特設舞台で踊る3人を、観客が囲んだ (C)matron2018
横浜美術館1階の特設舞台で踊る3人を、観客が囲んだ (C)matron2018

 国内外で活動する大植真太郎、平原慎太郎、森山未來(みらい)が振り付け、踊った『談ス』(平成26年)は、その後、シリーズ化された人気作。本作は、開催中の「NUDE-英国テート・コレクションより」展に取材した、横浜美術館での特別公演だ。

 1階の特設舞台を観客が囲み、部屋着風衣装の3人が登場。沈黙の中、おもむろに動きだす。バレエの技法とその逸脱を操る大植、森山の動物的しなやかさと緊張感、平原の強い足腰と意表を突く軽やかさ。同調も誇張も強いない、三者三様の身体性と空気感によるソロは、ふざけたじゃれ合いから、激しく組み合うデュオ、トリオへ発展するかと思えば解消、次の展開へ。

 ダンスだが音楽はなく、代わりは呼吸と声。弾む息、日常雑感の独り語り、ナンセンスな言葉の応酬が、身体の反応と一体化し踊りが生まれる。3人は作為と自然、振り付けと即興、演技と素顔の間を行き来。ナマな言葉と身体をぶつける談スは、思想や政治の根源には、常に個人の欲望と身体が存在することをも想起させる。西洋美術の裸体表現の歴史を追い、身体への視線の変遷を読み解く展覧会につながる点である。

 近年、仏ルーブルやポンピドーをはじめ、欧米の美術館はダンスに注目し、展示室での上演も行われている。まだ日本ではまれだが、生きたアートであるダンスと美術館の有機的協働の可能性を示す、好企画だった。5日、横浜美術館。(舞踊評論家 岡見さえ)

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