化粧(メーク)を通して高齢者に前向きな気持ちになってもらう「化粧療法」(メークセラピー)が、明石市大久保町の高齢者施設「大久保苑」で毎月一回行われている。化粧には気持ちが明るくなるなどの心理的な効果があるとされており、同園では利用者以外の地域のお年寄りにも開放。会話が増えるなどの効果が出ているという。
メークを施すのは、県内外の施設や病院で化粧療法を実践するNPO法人「美メイク・アクトレス」(姫路市別所町)のセラピスト、上月由美さん(33)=加東市。平成28年11月から毎月、利用者らにメークを施している。
同施設は通所のほか、短期間の宿泊や利用者宅への訪問サービスを提供。4月19日の化粧療法には通所や宿泊の78~98歳の6人の女性が参加した。
「お化粧は普段からしますか」。上月さんが優しく声をかけながらクリームで顔をマッサージしたり、ファンデーションやアイシャドー、口紅を施したりしていく。
メークを終えた女性は「華やかな気持ちになった」と笑顔を見せた。最初は「恥ずかしい」と遠慮していた別の女性も、メークが進むうちに表情が柔らかくなった。
同市大久保町の柳川玲子さん(85)は「1人暮らしで化粧品を買いに行くことができない。きれいにしてもらえるとやっぱりうれしい」と話す。
上月さんは「家族や他の利用者から『きれい』と言ってもらうと笑顔になる。高齢者同士のコミュニケーションにつながっている」と説明。化粧療法には病気や加齢で落ち込んだ気持ちを前向きにさせたり、心身をリラックスさせたりする効果があるという。
同施設では利用者以外の高齢者も無料で化粧療法を体験することが可能だ。上月さんは近隣住民や施設の職員らを施術者として育成し、活動が各家庭に広がることを期待している。次回は5月24日午後2~3時。問い合わせは大久保苑(電)078・934・6400。