特殊詐欺あるいはマネーロンダリング(資金洗浄)のツールとして、近年急速に存在感を増しているのがベトナム人の銀行口座だ。留学生や技能実習生として来日し、国内の金融機関で開設したものが犯罪集団に流出しているとみられる。帰国時に小遣い稼ぎの感覚で売却する人も多く、大阪府警では今年2月から、ベトナム人が利用するアプリや情報サイトを通じて注意喚起する取り組みをスタートさせた。ほんの数年前まで、不正送金先といえば中国人の口座が圧倒的だったが、今のトレンドは完全にベトナム。その背景にあるものは-。
相次ぐ摘発
警視庁は昨年以降、悪用されると知りながら口座を売買した犯罪収益移転防止法違反の疑いで、ベトナム国籍の男女らを相次いで逮捕した。
口座は、犯罪ツールを用立てる「道具屋」に流れたり、仮想通貨の移転先として使われたりしていた。
摘発されたベトナム人はいわば仲介役だ。口座そのものは、在日ベトナム人がよく利用する会員制交流サイト(SNS)を通じて入手していたという。
警察庁のまとめによると、昨年発覚したインターネットバンキングの不正送金事件で、送金先となった口座の名義人765人のうち59・1%(452人)がベトナム人だった。平成27年の25人と比べると、その急伸ぶりは一目瞭然だ。
一方で、その年に全体の57%(1350人)を占めていた中国人の口座は、昨年には151人まで激減。わずか2年のうちに、ベトナムシフトという大きな変化があったことが分かる。