北の核実験場廃棄声明

米朝交渉の正当化に迫られ…苦肉の「勝利」宣言

 北朝鮮の非核化を前提条件とするトランプ米大統領との直接会談を控え、金正恩朝鮮労働党委員長は、真剣さを行動で示す必要に迫られていた。何より、核兵器開発を優先する路線の下、経済的負担を強いられてきた幹部や国民に向け、「非核化」交渉の正当化が喫緊の課題だった。

必要だった言い訳

 「国家核戦力建設という歴史的大業を5年も満たず達成したのは、並進路線の偉大な勝利だ」。金委員長は20日、党中央委員会総会でこう勝利宣言した。

 核開発と経済建設を同時に進める「並進路線」は2013年の中央委総会で打ち出され、金正恩体制の政策の柱をなしてきた。昨年10月の前回総会でも金委員長は、並進路線の貫徹と核戦力建設の完遂を鼓舞していた。核を米国の脅威から自国を守る「宝剣」だとも繰り返し強調し、トランプ氏に3月、会談を打診する直前まで党機関紙は「核戦力強化の選択は絶対、正しかった」と主張した。米朝対話にかじを切るには、国民を納得させるだけの言い訳が必要だった。

 布石はあった。金委員長は昨年11月の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」の発射を受け、「国家核戦力の完成」を宣言していたからだ。今回、持ち出したのは「核戦力兵器化の完結」が検証され、もはや核実験やミサイル試射は必要なくなったとの論理だ。

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