主張

日中経済対話 前のめりの協力は危うい

 日中両政府は、貿易や投資、経済協力などを話し合う、閣僚級のハイレベル経済対話を約8年ぶりに再開した。

 双方は自由貿易体制の強化が重要という認識で一致した。だが、日本が是正を促した鉄鋼の過剰生産や知的財産侵害などの具体論では、何ら前進がみられなかった。

 対話機運の高まりとは裏腹に日中双方が目指す経済の姿には大きな隔たりがある。まずはその現実を厳しく認識すべきである。

 世界2位の経済大国である隣国との関係は日本に多大な影響を及ぼす。対話の場を設け、良好な関係を築くことには意味がある。

 ただ、それは、市場経済より国家統制を優先する中国の恣意(しい)的な経済運営に変革を迫る場とすべきである。ここに目をつむって前のめりに動くことはできない。

 今回の対話には、5月に予定される日中韓首脳会談に向けて経済関係を改善する狙いがあった。日中韓3カ国の自由貿易協定(FTA)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉加速で合意したのもこのためだろう。

 今年は日中平和友好条約締結から40年の節目だ。それが後押しした面もあろうが、対話再開を急いだ中国の思惑を見過ごせない。

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