かつて和歌山県湯浅町湯浅の顕国(けんこく)神社で使用されたが、老朽化のために蔵で眠ったままになっていた御所車(ごしょぐるま)の修復が完了した。10月の例大祭では、装束を身に着けた女児「童女(わらわめ)」が乗った御所車を氏子らが引っ張り、みこしなどとともに町内を練り歩くという。
御所車は牛車(ぎっしゃ)とも呼ばれ、平安時代などには貴族や皇族の乗り物として牛が引っ張ったとされる。神社によると、この御所車は大正4年、地元の呉服組合が奉納。奉祝行事などでは童女が御所車に乗り、牛の代わりに氏子の男衆らが引っ張って町内を練り歩くなどして、数十年間使用されてきたという。
しかし、昭和15年頃から経年劣化で動かすことが困難になり、境内の蔵に保管。以降は御所車なしで行事が営まれてきた。平成29年4月、同町が「『最初の一滴』醤油(しょうゆ)醸造の発祥の地 紀州湯浅」として文化庁の日本遺産に認定されたのを契機に、御所車の修復事業がスタート。町民や町内の企業などから約780万円の寄付金が集まったほか、国からの補助も受け、約8カ月かけて菊の御紋に金箔(きんぱく)を施したり漆を塗り直したりしたという。
御所車が神社境内で3月下旬に公開された際には、同町の主婦、平岡すみ江さん(75)は「きらびやかな装飾が、とても立派で感動します」。長尾常民(つねひと)宮司は「御所車が復活し、古き良き伝統を受け継ぐことで地域の活性化につながれば」と話した。