若狭町熊川宿にある築約130年の古民家を改修したシェアオフィスが7日、オープンした。企業のオフィスや大学の活動拠点になる個室をはじめ、物販やカフェなどにも利用できるイベントスペースなどを備える。熊川宿は人口減少、高齢化が進んでいる。地元住民らはオフィスを利用する若者らとの交流拡大による地域活性化に期待を寄せる。
若狭地域から京都にサバを運んだ鯖街道の宿場町だった熊川宿は古い町並みが残り、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されている。改修された古民家は炭問屋だった「菱屋」。熊川宿の中心部にあり、木造2階建て、延べ床面積は約280平方メートル。平成24年ごろから空き家になっていたという。
おおい町出身で、建築企画、開発を手がける「デキタ」(東京)社長の時岡壮太さん(37)が地元で町づくりに関わるような事業をしたいという思いから古民家を改修したシェアオフィスを計画。同町や地元住民らでつくる「若狭熊川宿まちづくり特別委員会」も趣旨に賛同し協力した。
約6〜30平方メートルの個室を6区画設けたほか、ケヤキの大きな梁(はり)と土壁を生かし、車庫だった場所に床を設置したイベントスペースなども整備。総事業費は約900万円で、3分の1は国と同町の補助金を受けた。個室のうち4区画は京都の呉服店のギャラリー、大学の研究活動拠点など利用が決まっている。
オープンに合わせたセレモニーがあり、森下裕町長や地元の区長らが出席。古民家の所有者の一人で、大阪府枚方市に住む勢馬和子さん(71)は「県外に出るまで暮らしていた思い出の詰まった建物だが、維持するのが大変だった。こうした形で活用してもらえて本当によかった」と話した。