シリア情勢

シリアで急増する「一夫多妻」 内戦で男性が減少、自立困難な女性が生活のために選択

 内戦の続くシリアで、男性が複数の女性と結婚する「一夫多妻」が増加している。同国ではもともと「一夫一婦」が一般的だが、国民の9割を占めるイスラム教徒には、同時に4人まで妻帯できるとするイスラム法(シャリーア)の規定に基づく身分法が適用される。一夫多妻が増える背景には、長引く内戦で男性が減少し「女性余り」が進む中、困窮した女性が経済力のある既婚男性との結婚を選択している、と専門家は指摘する。

 米政策研究機関「ブルッキングス研究所」が紹介しているシリア司法当局の統計によると、内戦前の2010年に首都ダマスカスで届け出があった婚姻のうち、女性が「2人目以降の妻」である割合は5%だった。それが15年には30%まで上昇した。

 同研究所は、一夫多妻が増加している理由について「相対的に男性が不足している」ためと分析。男性が内戦に赴いて殺されるか、重傷を負うか、行方不明になってしまう場合、その妻や子供は生活に困窮せざるを得ない。

 シリア情勢に詳しい東京外国語大学の青山弘之教授も「一夫多妻のシリア人家庭は最近とくに顕著だ」と指摘。仕事がなく経済的に困窮した女性が「生活の糧」として裕福な既婚男性に嫁ぐためだと分析する。

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