福岡市の印刷会社を営む男性社長は、かつて印刷に使う溶剤の使用をやめるよう労基署から突然、指導された苦い経験がある。その溶剤は同業他社も使っていただけに、「なぜ、わが社だけが…」と納得できなかった。振り返ると「同業他社への見せしめだったのではないか」とこぼす。
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中小・零細企業にくすぶる労基署への不信感を払拭するため、政府は神経を使った。働き方改革関連法案に盛り込んだ残業時間の上限規制の適用時期を大手企業より1年遅らせた。加えて労基署が中小企業を指導する際、「人材確保の状況や取引実態などを踏まえて行うよう配慮する」との付則も追加した。
しかし、厚労省は平成30年度、労働基準監督官を前年度に比べ13人増やし、2991人体制にした。関連法成立を織り込み、業務が増えることを見据えた対応だった。
自民党内には恒常的に人員が不足している労働基準監督官の増員に理解を示す声がある。だが、勝田氏の失言などから、見せしめのため恣意的な監督指導を行うことも懸念される。「結局、焼け太りしようとしているのではないか」との見方がくすぶっている。