今回、JAZA退会を決断した京急油壺マリンパークも技術的な高い壁に阻まれてきたという。追い込み漁を行う和歌山県太地町の関係者は「何世代にもわたって遺伝的多様性を保ちながら繁殖を続けるには追い込み漁からの入手が必要になる」と訴える。
国際的な反捕鯨の圧力に対する不満も漏れる。すでに退会した施設の関係者は退会後に不都合はないとした上で、「追い込み漁は国が認める合法的なものだ」として捕鯨文化を自ら否定するようなJAZAの態度に反発する。
太地町では、追い込み漁で入手したイルカを使うなどし、遺伝的多様性を確保した湾内での大規模繁殖計画を進めるなど、新たな試みも始まっている。また、同じ追い込み漁を行うデンマークの自治領、フェロー諸島の町・クラクスビークとの姉妹都市協定を行うなど、反捕鯨に対抗しようとする動きも出ている。
こうした中での京急油壺マリンパークのJAZA退会。関係者は「施設の事情にもよるが、今後もイルカの確保や伝統文化を守ろうとしてJAZA退会を選択する施設は出てくるのではないか」とみている。
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追い込み漁 音に敏感なイルカの習性を利用し、扇状に広がった漁船から水中に差し入れた鉄管を金づちでたたきながら湾に追い込んで捕獲する伝統的な漁法。水産庁が捕獲枠を決め、知事の許可を得て行う。和歌山県での捕獲対象は、国際捕鯨委員会(IWC)規制対象外のバンドウイルカなど9種類。漁期は種類によって異なるが9〜4月末。今季の捕獲枠は約1900頭で、主に食用のほか、中国など世界動物園水族館協会(WAZA)に非加盟のアジア諸国の水族館を中心に輸出されている。