ロシアの文豪から世界の若者へのメッセージ トルストイ生誕190周年に考える 作家・翻訳家 ふみ子デイヴィス氏

他者を生かす

 トルストイ直系の子孫は400人を超える。大多数が先祖トルストイの啓蒙(けいもう)思想を伝える文化事業を受け継ぎ、トルストイ姓を名乗っている。

 トルストイの書簡や日記を含む『トルストイ全集』90巻がデジタル化され、インターネットで無料ダウンロードできるようになった。プロジェクトの責任者を務めたトルストイの玄孫フョークラ・トルスタヤはこう語っている。

 「私たちは現代の技術の助けを借りて全集を集め、電子版を作ることにより、曾々祖父トルストイが当時抱いた思いをかなえ、彼の作品を望む人々全てが無料で読めるように努めた」

 トルストイとその家族にとって、「生きる」とは、まさに他者に生かされ、そして他者を生かす、そして足りるを知った生き方なのである。

精神的な遺産

 私が暮らすシンガポールはオフショア(課税優遇地)として知られ、近年、多くの日本人富裕層が住むようになった。

 課税から逃れて受け継ぐ膨大な財産と、末永く人類のよりどころとなり得る高邁(こうまい)な精神的遺産。あなたは親がどちらの遺産を残してくれることを望むのか-。どちらを後世に残したいか-。トルストイ生誕190周年の今年、世界中の若者に問いかけてみたい。

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