英国における元ロシア情報機関員らに対する神経剤襲撃事件は、深刻な国際法違反である。
条約で禁じられた化学兵器を製造し、外国で使用することにより、亡命者とその家族を暗殺しようとした。事件の解明と責任の追及は、国際社会にとり欠かせない。
だからこそ、欧米諸国や北大西洋条約機構(NATO)のおよそ30カ国・機関が、ロシアを非難し、外交官150人以上の追放を決めたのである。
ところが、この対露制裁の環(わ)に日本は加わっていない。見て見ぬふりをするような態度は不適切であり、国益を損なう。
メイ英首相は各国・機関の協力について「ロシアが国際法を無視し続けることができない最大級のメッセージを連帯して送る」ものだとして歓迎した。
メイ氏は20日、安倍晋三首相と電話で協議した際に、英国の立場への支持を要請した。だが、日本は十分に応えていない。
自由と民主主義や人権、主権の尊重といった基本的な価値観を、日本は欧米と共有すると繰り返しながら、問題が起きると行動に移さない。そう受け止められた国がどこまで信用されるか。