【現役スプリンター 末続慎吾の哲学】メダリストの生きた言葉(2/2ページ) - 産経ニュース

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現役スプリンター 末続慎吾の哲学

メダリストの生きた言葉

 トップアスリートは一般の人たちが立てない舞台で競技するからこそ、そこで何を感じたのか伝えてほしい。生きた言葉を聞きたい。その選手にしか感じられなかったこと、そのストレートな言葉やしぐさが、スポーツをする者と見る者とをつなぐ。この点、一昔前より少し希薄になってきてはいないだろうか。

 アスリートは崇高さばかり求められてしまうと逃げ道がなくなる。怖いことだ。僕自身、若い頃に経験したのでよく分かる。アスリートは人間の美しさや醜さ、誠実さや葛藤を複雑に内に抱えている。その生き方は「素晴らしいですね」と持ち上げられるより、「面白いよね」と心を寄せてもらうべきものだろう。

 僕なんか跳ねっ返りの若手を見ると、「いいぞ、いいぞ」と拍手を送ってしまうが、今の日本は「わんぱく」や「逸脱」を許容する余裕がないように映る。時代なのか、みんな少し疲れているのかもしれない。

 一つ確かなことは、アスリートが無難な言葉ばかり続けていると危ない。将来、何を語っていいか分からなくなり、本人が苦しむ。もちろん発言によっては嫌われたり、反面教師に見られることもあるだろうが、喜怒哀楽はスポーツを豊かにする。正直になろう。アスリートはもっと言葉を持った方がいい。(陸上世界選手権200メートル、北京五輪400メートルリレー銅メダリスト)