わが国の65歳以上の高齢者の認知症有病率は約15%とされています。その中で一番多いのはアルツハイマー型認知症で、脳血管性認知症がそれに続きます。
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳卒中が原因となります。特に脳梗塞が圧倒的に多いといわれています。最近では、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の両方の特徴を有する混合型認知症という概念もあります。
アルツハイマー型認知症が主に近時記憶(数分から数時間、数日までの新しい記憶)障害を特徴とするのに対し、血管性認知症の場合、症状はさまざまです。気力低下や無関心、動作緩慢、記憶障害や、時間、場所、人物が分からなくなったり、注意力や計算力が低下したり、一連の活動を効率よく成し遂げることができなくなったりと、何らかの認知機能障害が出現します。
症状は比較的急激に発現し、段階的に増悪しますが、認知症の進行が一時的に止まったり、やや改善したりすることもあります。アルツハイマー型認知症と違い、人格が比較的よく保たれ、患者自身が病気(認知症)であることを自覚しています。
頭部のCT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像装置)検査では、認知機能を担っている場所に脳梗塞や脳出血を認めることもあれば、それ以外の場所に小さな脳梗塞を多発性に認めることもあります。これらの認知症状と画像所見および関連性を踏まえて、脳血管性認知症と診断します。残念ながら、脳血管性認知症はアルツハイマー型認知症に比べ、抗認知症薬の効果が期待できません。ゆえに、脳血管性認知症は予防することが重要です。