WTOだけでは埒(らち)があかないとして制裁で圧力をかける。だが、日米欧で対中包囲網を強め、打開するのが筋である。独善が認められる理由とはならない。
一連の措置は政権の判断で制裁措置をとれる米通商法301条などに基づく。
こうした国内法の活用はWTO協定に触れる恐れがあり、歴代政権は発動を自制してきた。だが、トランプ氏は通商交渉を自国優位にする道具立てにしようとしている。中国に限らず、あらゆる通商問題でこれを用いることに道を開く危うさがある。
鉄鋼関連では、カナダやメキシコ、欧州連合(EU)などが暫定的に対象外となったが、日本には適用された。
米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は、日本との自由貿易協定(FTA)交渉に期待をみせている。鉄鋼を取引材料にして、他の分野で譲歩を迫れると踏んでいるのだろうか。
中国は米国製品の関税を引き上げる対抗措置の構えをみせる。大国間の衝突の懸念が高まり、金融市場は大荒れとなった。世界の貿易縮小は、ほかならぬ米国経済に打撃を与えるのである。