水中考古学へのいざない(21)

韓国・新安沖の海底沈船 日中韓 三国貿易の構造示す

【水中考古学へのいざない(21)】韓国・新安沖の海底沈船 日中韓 三国貿易の構造示す
【水中考古学へのいざない(21)】韓国・新安沖の海底沈船 日中韓 三国貿易の構造示す
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 1976年早春、韓国南西部の新安沖で大量の陶磁器を積んだ沈船の存在が確認された。海底からは、14世紀の中国の青磁や青白磁、白磁といった陶磁器類や銅銭などに加え、日本のげたや日本刀、京都の「東福寺」と記された木簡なども見つかっており、この沈船は、当時の中国、韓国、日本を結んだ貿易や船の構造などの研究に多大な情報をもたらした。

 †漁網にかかった仏像

 この発見は1975年、漁民の網に青磁の仏像や花瓶など中国宋・元代の陶磁器が掛かりだしたことに端を発する。だが、当時の漁民らは仏像などが不吉なものと思い、海に捨ててしまった。もし、その仏像が完全な形のままだと、数千万円という貴重なものだった。それだけに海底盗掘団が暗躍し、百数十点の焼き物を引き上げては、闇売りするなどの事件が相次いだ。

 危機感を抱いた「韓国文化財管理局」は、海軍潜水班の協力の下に、大規模な海底調査団を結成。76年の第1次調査から84年の第10次調査まで、9年間に海軍ダイバーは延べ9896人を動員、毎年の潜水時間は延べ3474時間にのぼった。調査地点の水深は20〜25メートルくらいだが、黄海に面する海域は潮流が速く、海中が泥により視界がゼロという悪条件が重なるため、調査は困難を極めた。

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