鑑賞眼

新国立劇場「赤道の下のマクベス」 激烈な感情渦巻く処刑前夜

死刑執行を待つ朴(池内博之、右)と黒田(平田満)=谷古宇正彦撮影
死刑執行を待つ朴(池内博之、右)と黒田(平田満)=谷古宇正彦撮影

 戦後、BC級戦犯として裁かれた日本人と朝鮮人が極刑を待つ日々を描く。舞台はシンガポールの刑務所の中庭。その閉ざされた空間から、歴史と世界を照射する。鄭義信・作・演出。

 「マクベス」を偏愛する朴(池内博之)、冤罪(えんざい)を訴える李(尾上寛之)ら朝鮮人。ニューギニアで地獄の行軍をした黒田(平田満)、元大尉の山形(浅野雅博)ら日本人。彼らは捕虜を迫害した罪で、隣接する独房に収監されている。

 残虐行為を命令し続けた大尉から、捕虜を監視しただけの軍属まで、同じ死刑囚でも千差万別。おのおのが非情な過去を振り返る中に、憤り、やりきれなさ、慙愧(ざんき)の念など激烈な感情が渦巻く。しかも、笑いや陽気な歌を織り込みながら、死を待つ極限状況と過酷な内面のドラマを活写するのだ。

 朴、李、山形の処刑が明朝と宣告された最後の晩餐(ばんさん)。朴らが余興として「マクベス」の一幕を演じる場面では、「破滅の道を選んだマクベス」に触発されておのおのが本音をぶちまけ、激しくぶつかり合う。ここに作者の批評性がある。池内の直情、平田の人間味、浅野の冷徹な諦念など、演技も頂点に達する。