主張

日露交渉 目先の成果は国益損なう

 国際ルールを無視した振る舞いで米欧との対決姿勢を強めるロシアのプーチン政権が、北方領土問題に限って正義と法を尊重するのか。懐疑的にならざるを得ない。

 ロシアのラブロフ外相が来日し、河野太郎外相と会談したが、その不安が募るばかりである。

 両氏は、北方領土での共同経済活動の実現に向けた作業を加速させることで一致した。

 安倍晋三政権は、共同経済活動を領土問題解決の糸口にしたい考えだ。首相は5月に訪露し、プーチン大統領との首脳会談で、具体的事業の合意を目指すという。

 「共同経済活動を進め、領土問題を解決し、平和条約を締結していく」。首相が北方領土をテーマにした高校生弁論大会の受賞者を前に語った言葉である。

 共同経済活動は、日露双方の法的立場を害さない「特別な制度」の下で実施するという。だが、その姿は見えてこない。日本の主権を損なう危険もある。

 共同経済活動が、なぜ領土返還に結びつくのか。むしろロシア人の北方領土への執着を強めることにならないか。

 ラブロフ氏は、日本のミサイル防衛(MD)態勢の強化に反対した。自国の核戦力を重視し、日本国民の安全を軽視する独善的な議論である。

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