話の肖像画

大阪大教授・関谷毅(2) 科学者というより営業マン

大阪大学の関谷毅教授 (川口良介撮影)
大阪大学の関谷毅教授 (川口良介撮影)

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〈テクノロジーの応用は、脳波測定の分野にとどまらない。人工知能(AI)技術などを活用し、妊婦の子宮の収縮状態や胎児の心電図のデータを遠隔で診断できるシステムも開発している〉

約2年前、私たちの脳波測定の技術が完成してからしばらくたった頃のことです。額に小型センサーを貼り付けて脳波が測れるのなら、妊婦のおなかに装着して胎児の心電図などのデータが取得できるのでは、という声が在籍する大阪大で上がり、産婦人科医と協力することになりました。一つの技術が別の医療現場でも使える可能性が出てくるのは、開発者としてこの上なく幸せなことです。

私は産婦人科のエキスパートではありません。自分の技術をどのように役立たせることができるか、産婦人科の先生方と日夜話し合い、少しずつ答えが見えてきました。

産婦人科では通常、妊婦の方が来院時に専用機器をおなかに取り付けるなどして胎児や子宮の状態を確認しています。遠方からの通院は負担が大きく、特に過疎地域では胎児の状態を日常的に見守ることはほぼ不可能です。私たちが開発した小型センサーは、胎児の心臓の拍動や、子宮を形成する筋肉の微妙な変化を測定する部品を搭載しており、複数のデータをAIが仕分けできます。通院しなくても胎児の見守り診療が可能になります。

今回、産婦人科医と長い時間をかけて話し合うことで、遠方の妊婦のサポートに悩む現場のプレッシャーや、診断する側の人材不足の課題などを知ることができました。こうした話し合いも、遠隔診断システムの技術開発に役立ったと思います。

〈テクノロジーを多様な分野で適切に活用するためには、専門の異なるエキスパートとの対話が必要不可欠だ〉

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