明治の50冊

(10)大槻文彦「言海」 独力で編んだ普通語の総体

【明治の50冊】(10)大槻文彦「言海」 独力で編んだ普通語の総体
【明治の50冊】(10)大槻文彦「言海」 独力で編んだ普通語の総体
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 この国で普通に使われている言葉を集め、説明し尽くす-。日本で最初のそんな近代的国語辞典『言海(げんかい)』は、明治22年に4分冊の刊行が始まり、24年に完結した。国語学者の大槻文彦が独力で編んだ労作は後の辞書の範となる。

 文部省に勤めていた大槻が国語辞書の編纂(へんさん)を命じられたのは29歳のとき。輸入された英語辞書の作りを研究し、街中で耳にした言葉は手帳に書きとめる。こうした地道な努力の末、17年かけて『言海』は完成した。

 近代国家に向け、法や議会の整備が急ピッチで進んだ時期。ただ、言葉はまだ文語と口語の区別もあいまいで、標準語の定義も定まっていなかった。国語を体系化することへの使命感が大槻を動かした。作家の高田宏さんは、大槻の生涯を描く『言葉の海へ』で〈一国の辞書の成立は、国家意識あるいは民族意識の確立と結ぶものである。明治国家にとっての、そういう辞書が『言海』であった〉と記している。