【ワシントン=加納宏幸】ブッシュ(子)米政権で北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議の次席代表を務めた朝鮮半島問題の専門家、ビクター・チャ氏は9日、ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)に寄稿し、トランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による会談に関し、失敗すれば米朝が「戦争の瀬戸際」に立たされるとして周到な準備を訴えた。チャ氏はトランプ政権が一時、駐韓大使への指名を検討していた。
チャ氏は型破りな2人の指導者による会談の行方は「予測不可能」であるとし、「数十年来の争いを終わらせるまたとない機会だが、失敗すれば両国を戦争の瀬戸際に押しやる可能性がある」と論じた。
北朝鮮との交渉に関わった経験から、チャ氏は「北朝鮮の体制はただで何かを手放すことはしない」とし、非核化の見返りを要求してくると断言した。
北朝鮮の出方に対してトランプ政権が取る可能性がある道として、(1)核兵器や長距離弾道ミサイル開発の凍結や最終的な廃棄に対する漸進的なエネルギー・経済支援や制裁解除の実施(2)非核化に対する外交関係の正常化や休戦中の朝鮮戦争を終わらせる平和条約の締結-の2つを挙げた。
チャ氏は、米国がいずれの道を取るにしても、同盟国である日韓両国との緊密な調整や、交渉の裏付けとなる制裁圧力や強力な抑止力の維持が必要であると強調し、「首脳級の交渉が失敗すれば、他に外交手段はなくなる」と指摘した。