東京特派員

1世紀を生き抜く「人造人間」 湯浅博

 日本で人工知能(AI)といえば、ロボットと組み合わせた介護システムを思い浮かべる人もあろうか。会話でお年寄りを和ませ、介護する側を支援する働きもある。あるいは、将棋や囲碁の相手もしてくれる平和の使徒だ。

 ところが、周辺の腹黒い国々は違う。中国人民解放軍は近づく米原子力空母に、AIの指揮を受けた無数のドローン群が襲いかかる構図を描いている。

 昨年6月に、中国電子科技集団公司が119個のドローン群の飛行実験を成功させたとの報道は、米国防総省を驚かせた。スズメバチのように無数のドローンに襲われては、空母がもつ近接防空システムの能力を超える。ある日、壊れたAIの指令でスズメバチ・ロボットが飛んできて、小学生たちが襲われてはかなわない。いやな世の中になったものである。

 そんなことを考えていたとき、社の先輩から、大正時代に翻訳されたという興味深い本のコピーをお借りした。チェコの作家、カレル・チャペックの戯曲「人造人間」である(岩波文庫版は「ロボット」)。彼はAIの恐怖を100年も前に描いていたのだ。

 チャペックは原題の戯曲作品「R・U・R」の中で、初めて「ロボット」という新造語を使って、世界中に流布させた。

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