外資に先んじ解決を
「海賊版サイトは、1つ潰すには時間がかかるのに、増殖は簡単にする。なぜなら海賊版サイトが使っている漫画の電子データは、ネット上に残ったままだからです。ならば逆に、海賊版サイトを取り込んで公式化してしまい、日本の漫画の需要を世界に広げる選択肢もあります。すでにネット上にあるデータを使えば比較的手間がかからず、コストも抑えられます」
「今の日本の漫画界は『内需』です。海外の人も読めるようにネット上で自動翻訳などをすれば、いずれ紙の本を買ってくれるかもしれないし、映画化につながるかもしれない。市場発展のため、逆に海賊版を利用する手もあります」
「漫画業界は衰退するか、将来の漫画文化を守る新たな仕組みを作るか-という瀬戸際にいます。画期的な電子漫画サービスの展開を外資系企業に先を越されたら、検閲や削除の基準など勝手に決められる懸念があります。そのような文化的侵略を防ぐためにも、漫画家と出版社主導で、外資に先んじて海賊版問題にケリを付けられたらと思います」
(文化部 本間英士)
赤松健 あかまつ・けん。1968年、東京都出身。中央大卒。1993年、「ひと夏のKIDSゲーム」でデビュー。主な代表作に「A・Iが止まらない!」「ラブひな」「魔法先生ネギま!」「UQ HOLDER!」など。今年、漫画家デビュー25周年を迎えた。株式会社「Jコミックテラス」会長。日本漫画家協会理事。
漫画海賊版サイト 主流は、すでに無断でサーバーにアップされた漫画データなどに誘導するリンクを張ったもの。「リーチサイト」と呼ばれる。海外のサービスが多く、運営者の特定が難しい。リーチサイト自体は外部にリンクを張っているだけで、自ら海賊版データを保持しているわけでもないため摘発が難しい場合が多い。また、1つのリーチサイトを潰しても、データは依然ネット上に残ったままなので、すぐに別のリーチサイトが現れ、イタチごっこが続いている。
漫画の電子版
出版科学研究所(東京都新宿区)が2月26日発表した、昨年の漫画市場規模によると、単行本の電子書籍の推定販売金額が前年比17・2%増の1711億円となり、初めて紙(1666億円)を上回った。紙は前年比14・4%減で、過去最大の落ち込み。漫画雑誌は、紙は前年比9・7%減の917億円、電子書籍は16・1%増の36億円だった。