2022年に完成すると地上最大の光学望遠鏡となる巨大マゼラン望遠鏡(GMT)[日本語版記事]の場合、建設に携わったエンジニアたちは設計を始めた段階で、おおよそのことは予想していた。カーネギー研究所が所有し運用するラスカンパナス天文台への設置が完了すれば、GMTが備える7つの鏡の合成有効口径は約25mに達する。それは、ハッブル宇宙望遠鏡の10倍に匹敵する分解能を発揮するのに十分な大きさだが、そよ風の影響すら受けてしまう大きさでもある。
「建物は前代未聞の大きさであり、地上から最高地点までの高さは22階建てのビルに相当します。容量はさらに大きく、かなり多くの空気が内部に存在します」と語るのは、巨大マゼラン望遠鏡機構(GMTO)の運用部門を率いるパトリック・マッカーシーだ。「巨大な望遠鏡なので画質への期待も膨らむ一方、建物が大きくなるにつれて影響を受ける外因も増えるのです」
そのなかには風による振動はもちろん、ドーム内部の熱特性も含まれる。熱特性には鏡の温度と、日中ずっと太陽光を浴び続けて温まった金属による放射熱がある。そしてそのどちらも、対流する空気の影響も受ける。「こうした要素を考慮に入れるには、その分野の専門家に頼る必要がありました」とマッカーシーは述べる。
そこで天文学者たちは、ボーイングに白羽の矢を立てた。巨大天文台という型破りな建物の周辺気流を扱う上で、最適な経験と技術を持ち合わせる航空宇宙企業だ。巨大マゼラン望遠鏡機構は15年、ボーイングと提携関係を結んだのである。