父の教え

児童文学作家・角野栄子さん 寝る前・食後…父のお話が創作の種に

 楽しいお話の時間は、来客などで中断することもあり、角野さんは姉と2人でその続きを考えた。「登場人物の気持ちを想像すると、自分の中にお話が生まれてくるんです」

 荷物を運ぶ魔女や、食いしん坊の小さなおばけ。角野さんの作品は、人の生きるすぐそば、日常と隣り合わせの「不思議」を捉える。見えない世界を感じるヒントをくれたのも孝作さんだ。

 お盆になると、孝作さんは迎え火をたき、子供たちとともに玄関に並ぶ。「ちょっとお足元にお気を付けくださいね」と、ご先祖さまの霊に語りかける。「本当に仏さまが帰ってくると子供たちに思わせたいんでしょうね。いつも具体的に言う。父が感じさせてくれる見えない世界は、リアリティーがありました」

 暮らしのなかで、想像させるきっかけもくれた。孝作さんが「しんぶんかんぷん、ねこのくそ」と言うときは、新聞を持ってきてほしいという合図だ。

 妻を見送った翌年、孝作さんは再婚。物語を通じた父子の濃密な時間は1年あまりにすぎなかった。それでも、「楽しく過ごした時間は私にとって大きな贈り物」と目を細める。

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