午後9時半、開票作業がスタート。ミスを誘発する兆候はこの時点で表れていた。開票作業を行う職員の一部が、この日最接近した台風21号への対応にあたらざるを得なくなり、マニュアル通りにはいかなくなったのだ。
開票作業は進み、投票箱を抱えた職員がせわしなくホールを出入りする。そんな中、総務部長らは報告された投票数に対し、実際の開票数が数百票不足していることに気付いた。
「開けていない投票箱があるはずだ」。あわてて未開封の投票箱を探したが、行方は分からず、時間だけが過ぎていった。
これまで市選管では、不足が数票程度なら「持ち帰り」として処理していた。だが、数百票もの票が不足する事態は「あり得ないことで想定外だった」という。
県選管は「数百票もの票の行方が分からなくなっていた時点で、県選管への報告、相談があってしかるべきだった」とする。だが、総務部長らは一切相談や報告を行わず、3人で相談の上、未使用の白票を混ぜて無効票を増やし、つじつまを合わせ開票終了とした。
ところがその後、空き箱を置いていたレッスン室から未開封の投票箱1個が見つかった。今さら事実を報告できなかったのか、見つかった投票用紙は前述の通り焼却された。ある市職員は「『3人寄れば文殊の知恵』というが、今回は3人そろって最悪の決断をした」と話す。