正論

戦闘を忌避する現代日本の文化 東京国際大学教授・村井友秀

 また、「概して平時鬼と称せらるる人若(も)しくは之に近き人は戦時は婦女子の如く反之平時婦女子の如き人に豪傑の多い事は否定の出来ぬ事柄である」「鬼大尉とか鬼小隊長とか評せらるるものに戦時案外臆病で中には日本の将校にコンナ弱い隊長が居るかと思ふ程弱い人が少なくない」(陸軍省)という状況も存在した。

 戦前の日本では、「死は鴻毛(こうもう)より軽し」とされる「死傷者感受性」が低い文化と、1週間に休日がない「月月火水木金金」と言われた猛訓練は日本軍の戦闘力を向上させた。

 しかし、厳しい体罰によって兵士の思考停止と行動の自動化を求めた教育では、戦争目的の理解も1次集団の形成も不十分で、猛攻に曝(さら)された兵士の士気を支えることができなかった。

 ≪最も死傷者への感受性が高い≫

 自衛隊は創設以来1人の戦死者も出さず1人の敵も殺したことがない。戦場では実戦を重ねて血に塗(まみ)れた兵器が信頼される。既に1000人以上の死者が出ている国連平和維持活動(PKO)で、1人でも自衛隊員に戦死者が出れば内閣が倒れるともいわれる日本は、恐らく世界で最も死傷者感受性の高い国であろう。

 カナダ政府はアフガニスタンへ兵士を派遣し100人を超える戦死者が発生したが、犠牲者の数はカナダ国民の損害の許容限度を超えず、派遣は継続された。

 70年以上戦争を経験したことがない現代日本で、戦闘力を引き下げる最大の力は、勇気や自己犠牲を否定し死傷者感受性が極端に高い戦後日本の文化である。(東京国際大学教授・村井友秀 むらい ともひで)

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