正論

戦闘を忌避する現代日本の文化 東京国際大学教授・村井友秀

 従って、兵士の間に家族同然の精神的連帯感が生まれれば、兵士は本能的に自分の身を犠牲にしても家族である戦友を守ろうとする。家族とは一緒に生活している人間の集団であり(1次集団)、兵士を兵舎で共同生活させる目的は、兵士の間に家族同然の精神的連帯感を生み出すためである。

 ≪陸軍省が認識していた弱点≫

 日露戦争では「露軍の将兵は一般に任務の軽重及上官の監視の度如何(いかん)を問わず常に誠実に所命の任務を履行し、その達成を期する風がある」、しかし「日本兵は部隊を以(もっ)てする諸種の戦闘任務は勇敢に解決するが、単独又は暗黒の際等に於ては上官の至厳の態度を以てする威嚇的激励を必要とする」(陸軍省)といわれた。

 すなわち、戦争目的を理解せず、任務を遂行することは義務であるという意識に欠ける日本兵は、集団的興奮を転化できる攻撃前進では積極的に行動するが、逆に恐怖に耐えることが要求される孤立した防御戦闘では、指揮官が威嚇的に叱咤(しった)しなければ防御の恐怖に耐えられなかったと陸軍省は評価していた。

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