浪速風

「春は名のみ」というが…眠っていた田の神、そろそろ目覚めの時だ

唱歌「早春賦(そうしゅんふ)」は、長野県の旧制大町中学(現大町岳陽高校)の校歌を依頼された作詞家の吉丸一昌が、訪れた信州の浅い春の情景を詠んだ。今年は全国的に「春は名のみの風の寒さや」がぴったりだ。豪雪の北陸地方などは「さては時ぞと思うあやにく 今日も昨日も雪の空」だろう。

▶数年前のこの時期に東北を旅して、青森県八戸市で国の重要無形民俗文化財「八戸えんぶり」を見物した。毎年2月17日から20日まで、馬の頭をかたどった烏帽子(えぼし)をかぶり、田をならす農具「えぶり」を手に、独特の節回しで歌い、種まきや田植えの動作を表現して舞う。

▶各地区の「えんぶり組」が街に繰り出し、にぎやかなお囃子(はやし)を響かせながら門付けをして歩く。「えぶり」は揺さぶるという意味の「いぶり」に由来し、冬の間眠っていた田の神を揺さぶり起こす。豊作祈願の郷土芸能は、土のにおいがした。春を待ちわびるのは北国だけではない。そろそろ目覚めてほしい。