産経抄

羽生棋聖と藤井新六段が歩む、孤高の道 2月19日

 国民栄誉賞に輝いた羽生善治(はぶ・よしはる)棋聖(47)といえば、初の永世七冠を成し遂げた将棋界の「絶対王者」である。今月13日には、囲碁の井山裕太七冠(28)とともに授与式に臨んだ。

 ▼式後に行われた会見で、4日後に五輪2連覇を達成する羽生結弦(はにゅう・ゆづる)選手についての質問も出た。「読み方は違うが、漢字は同じ。親近感を持っています。芸術的な滑りを見てみたい」。笑顔でエールを送っていた。

 ▼もっとも、フィギュアスケートの絶対王者の滑りを、ゆっくり観戦するわけにはいかなかった。羽生棋聖は、同じ日に行われた朝日杯オープン戦本戦準決勝で、最年少プロの藤井聡太五段に苦杯を喫する。藤井五段は決勝も制して、15歳6カ月での一般棋戦の優勝、六段昇段と、新たな最年少記録を作った。

 ▼将棋界は、キャッチフレーズ作りがうまい。最近は「ひふみん」の愛称でおなじみの加藤一二三九段は、かつて「神武以来(じんむこのかた)の天才」と讃(たた)えられた。谷川浩司九段が終盤で相手の玉を寄せる圧倒的なスピードは、「光速の寄せ」と恐れられた。集中力が高まると目つきが鋭くなる、羽生棋聖の「羽生にらみ」も有名である。ただ藤井新六段については、活躍があまりにもめまぐるしすぎて、ニックネームを付ける暇もないようである。

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