美に生きた王が夢見た英雄 東京二期会「ローエングリン」 21日から

 深作は今回、オペラの冒頭から舞台の隅にルートビヒ2世を登場させ、ステージ上には建設中のノイシュバンシュタイン城がある。ルートビヒ2世の回顧がオペラの物語とシンクロしていく演出を施し、ローエングリンと王は二重写しの存在となっている。伯爵をルートビヒ2世の精神状態を鑑定して幽閉に持ち込んだ医師とするなど、史実とオペラの重ね合わせが緊張感のあるドラマを生む。

 「ローエングリンはルートビヒ2世が思い描く理想の騎士です。政治や戦争に翻弄された王はメルヘンの世界に身を委ね、美の探求者として生きることを決意しますが、それは白鳥の騎士であることを告げ、戦うことを望まなかったローエングリンと同じです。彼らは武の英雄ではなく、美の英雄です。平和を祈る英雄です。男性的な力の英雄と対照的な存在であることは、伯爵夫人も同様です。エルザとともに女性として男性社会に拮抗(きっこう)する強い存在であり、世界は善と悪を単純に分けることはできず、捨てられた者、弱い者の視点から世界を見ることが不可欠で、その先に何が見えるのかを考えさせてくれます」

 ローエングリン役は福井敬、小原啓楼、エルザ役に林正子、木下美穂子らによるダブルキャストで、準・メルクルが東京都交響楽団を指揮する。公演は21、22、24、25日。

会員限定記事会員サービス詳細