芸能人やスポーツ選手、フリーランスのプログラマーらの労働環境改善に向け議論してきた公正取引委員会の有識者会議は15日、不当な移籍制限などを一方的に課すことは独占禁止法違反に当たる可能性があるとの初の判断を示した報告書を公表した。
企業と雇用契約を結ばずに働くフリーランスの労働現場では、力関係の差を背景に企業側が移籍を制限したり、人材を不当に囲いこんだりするケースがあり、トラブルが相次いでいた。
フリーランスの人は企業と対等な関係で仕事を請け負う契約を結んでいるが、強い立場を利用し取引相手に不利益を強いる行為は、独禁法で禁じた「優越的地位の乱用」に当たる。これまで労働分野への同法の適用はほとんどなかった。
報告書では、芸能人やスポーツ選手らの移籍を不当に制限したり、プログラマーらに過剰な秘密保持義務を課す事案を問題視。独禁法を改正せず、現行法でも適用対象になると指摘した。公取委が認定すれば、排除措置命令の対象になる可能性があり、公取委は関係業界に自己点検を促す。
有識者会議では昨年8月から、芸能人やスポーツ選手だけでなく、システムエンジニアやデザイナー、コンサルタントなど幅広い職種を念頭に、個人の労働分野で独禁法が適用できるか検討を進めてきた。