本日はバレンタインデー。その起源をたどれば、古代ローマのルペルカリア祭に行き着く。当時の若者は、狼の女神ルペルカルが住むとされる洞窟に向かい、生贄(いけにえ)のヤギを供えた。続いてヤギの皮を腰に巻き、走って丘の周りを一周する。
▼途中で若い女性に出会えば、ヤギの革ひもでむち打った。「女性の不妊症を治し、真冬の間に活動を停止していたあらゆるものの繁殖力を呼び覚ます」。つまり、春を迎えるための儀式だった(『ヨーロッパ祝祭日の謎を解く』アンソニー・F・アヴェニ著)。
▼スピードスケート女子1500メートルの高木美帆選手の銀メダル。ノルディックスキー・ジャンプ女子の高梨沙羅選手とフリースタイルスキー男子モーグルの原大智選手の銅メダル。平昌冬季五輪で日本勢のメダルラッシュをもたらした3選手には、共通点がある。
▼高木選手は、前回ソチ大会の代表選考から漏れた。金メダル確実といわれた高梨選手は、4位に終わった。原選手は、先に世界で結果を出しているライバルの陰に隠れていた。3選手はともに、大きな挫折を経験している。そんな冬の時代に蓄えた力を一気に出し切った。高らかに春の訪れを告げる、見事なパフォーマンスだった。
▼バレンタインデーのチョコレートにも、謂(いわ)れがある。かつて英国の女性は、気に入った男性に媚薬(びやく)の効果をもつ食べ物を贈っていた。チョコレートにも、フェニルエチルアミンという「愛の分子」が含まれている。
▼五輪では、媚薬ならぬ禁止薬物の摂取は御法度である。ドーピング検査で、スピードスケート・ショートトラック男子の日本代表選手から、陽性反応が出た。本人は違反を否定しているものの、こちらは気がかりなニュースである。