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日本発の次世代太陽電池が注目を集めている。フィルム状で柔軟に曲げることができ、低コストで透明化も可能だ。光エネルギーの変換効率は現在主流のシリコン系に迫る水準に向上。年内にも実用化が始まる見通しで、太陽電池の用途を大きく広げそうだ。
(伊藤壽一郎)
特殊な結晶構造
太陽光から電気を作り出す太陽電池は現在、半導体の基板材料にシリコン(ケイ素)を使うタイプが主流だ。これに対して次世代型の本命といわれるのが「ペロブスカイト」と呼ばれる特殊な結晶構造の材料を使うタイプだ。
鉛を中心に有機化合物、ヨウ素、臭素などが規則的に並ぶ構造で、光を吸収しやすい。太陽光を浴びると電気的にマイナスの電子とプラスの「正孔」が生じ、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。この原理を桐蔭横浜大の宮坂力(つとむ)特任教授が2005年に発見し、太陽電池に利用する可能性に道を開いた。
宮坂氏は翌年、ペロブスカイト構造を持つフィルム状の物質を2種類の材料でサンドイッチ状に挟み、電子と正孔を逆方向に分離して動かすことで電流が生じる太陽電池を世界で初めて学会で報告し、09年に論文を発表した。
太陽電池の基本性能である光エネルギーの変換効率は当初、わずか2・2%で、シリコン系の26%台に遠く及ばなかった。だが、元素構成の改良などで急速に向上し、昨年12月には韓国の研究チームがシリコン系に肉薄する22・7%を達成した。
ありふれた元素を使うため原料費は安い。製造が簡単なのも利点で、ペロブスカイト物質を含む溶液をガラスやプラスチックの基板にペンキのように塗って乾かすだけで「中学校の理科室でも作れる」(宮坂氏)。真空ポンプなどの大規模な製造装置が必要なシリコン系に比べ、製造コストは半分以下という。