理研が語る

目に見えぬ微生物たちが織り成す熱い歴史大河スペクタクル 研究を未来へつなぐSF的想像 

【理研が語る】目に見えぬ微生物たちが織り成す熱い歴史大河スペクタクル 研究を未来へつなぐSF的想像 
【理研が語る】目に見えぬ微生物たちが織り成す熱い歴史大河スペクタクル 研究を未来へつなぐSF的想像 
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 SF小説を読むのが好きだ。なかなか読む時間が取れないが、一旦読み始めるとついつい熱中してしまう。時空にまたがる壮大な物語から受けるインスピレーションは、自身の研究活動にも影響を及ぼしている。これは私に限ったことではなく、特にロボット工学や航空宇宙工学の分野では、SF作品に影響を受けた研究者が多いそうだ。

 昨今では人工知能やゲノム編集技術がメディアを大いににぎわせている。これらの科学技術は人々の生活に多大な恩恵を与えることが期待されている一方で、不安を耳にすることも多い。例えば人工知能が職を奪うとか、ゲノム編集によりヒトの遺伝情報が意図せず組み替えられたり、悪用されたりするという懸念はもっともである。

 こうした不安の一つの原因は、科学技術のあまりにも急速な発展に、利用する側の価値観や想像力が追い付いていないことだろう。最先端の科学技術が将来の社会や文化にどのような影響をもたらすのかを予測することは専門家でも困難な場合がある。一般市民が不安を抱くのも無理はない。

 こうしたギャップを埋めるのがSFかもしれない。SF作品ではしばしば、現実世界でいまだ実用化に至っていない科学技術が社会で利用される様子が、作家の手により説得力を持って描かれている。もちろん本当にそのような未来が訪れる保証はないが、未来の社会を想像する一つの足掛かりになるだろう。こうした想像力は、研究成果を社会に発信するアウトリーチ活動にも通じると思う。研究成果を専門家以外にも理解してもらうためには、研究成果と社会との関係を想像できることが重要だからだ。

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