地球の周回軌道にある宇宙ごみ(スペースデブリ)を、衛星からレーザーで破壊する--。そんな大胆な構想を、中国の研究者たちが考案した。宇宙旅行が実現可能な時代に向けて深刻化が確実なデブリを除去するために、果たして有効な手段になるのか。
世界初の人工衛星スプートニク1号が打ち上げられた1957年以来、人類は地球の周回軌道に宇宙ごみ(スペースデブリ)と呼ばれる人工物の残骸を撒き散らかしてきた。現在、約2万個のデブリが地球を取り巻いている。
古い人工衛星の破片やロケットの切り離し部分、デブリ同士の衝突や風化で生じたさらに細かい破片などが浮遊し、なかにはスピードが時速17%2C500マイル(約28%2C163km)に達するものもある。こうした危険なごみの除去を巡っては、巨大な網を使った回収や磁石を使って周回軌道外に押し出す方法など、さまざまなアイデアが出されている。
そして今回、中国の研究者たちがデブリをなくす(もしくは多少は扱いやすくする)ための新しい提案をした。周回軌道にレーザー衛星を飛ばしてごみを破壊し、危険性の低い細かな破片にしてしまおうというものだ。
空軍工程大学のウェン・チュアン(温泉)と彼の研究チームは、レーザーが宇宙ごみの総量に与える影響を数値シミュレーションを用いて調査した。人工衛星にレーザー発射装置を搭載して打ち上げ、そこから近赤外線レーザーを放射する。チームが発表した論文によると、毎秒20回の放射を数分間にわたり行えば、デブリを破壊するのに十分だという。
論文には、レーザーの放射角や衛星の位置などのシミュレーション結果が説明されている。論文によると、衛星の地球に対する軌道傾斜角と昇交点赤経が、照射対象のそれと同じであるときに、レーザーの破壊力は最大になるという。
突飛なアイデアに聞こえるかもしれないが、シミュレーションはこの手の手法の出発点になり得る。研究チームは「シミュレーションがレーザーステーションの配備に向けた理論的基盤となり、レーザーを利用した宇宙ごみの除去につながる」と述べる。