正論

貴乃花は「忠実義務違反」なのか 印象操作のため概念が利用された印象強い 早稲田大学教授・上村達男

 会社法には取締役の会社に対する忠実義務の規定があり、相撲協会のような公益財団法人の理事にも同様の規定がある。会社法上この概念の意義については一定の議論があるが、そこでは会社と取締役との利益相反関係が常に想定されている。相撲協会で言えば、貴乃花親方が協会から金を借りたとか、その有する土地を売ったとか、貴乃花親方が第三者から借金をする際に協会が連帯保証をした、といった状況が想定される。

 国民は自分が有する資産を他人や金融機関に預けた場合、それを預かった者が負担すべき厳しい責任を理解する必要と実益がある。

 今回の貴乃花親方の行動が仮に問題ありとされたとしても、それは単なる不注意の問題であり、それを理由に理事を解任することは過剰反応である。忠実義務など知らない庶民に対する印象操作のためにこの概念が利用された印象が強い。肝心なときに評議員会を欠席した人物の責任とどちらが重いか、考えてみる価値がある。(早稲田大学教授・上村達男 うえむらたつお)

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