入試問題の解答例を公開するかどうかは、各大学で判断が分かれている。国立大学協会(東京)は全国の国立大に対し、正解や解答例は「受験生の便宜のために開示が望ましい」と通知している。ただ、複数の解答が考えられるケースでは「相当困難な問題が残ることになる」とし、対応は各大学に委ねている。
入試ミスがあった大阪大では例年4〜5月、希望した人に、問題と解答例の閲覧を認めている。しかし、閲覧期間が限られるうえ、大学を訪れる必要もあり、全面的な公開とは言い難い。阪大はこうした対応がミスを招いた可能性があるとして、解答例の公開の是非を検討している。
一方で徳島大は、少なくとも平成21年から、ホームページで著作権上の制限がかからない問題や解答例を公開している。担当者は「受験生や父母、高校の進路担当者からの要望もあり、サービスとして当然と考える」と話した。
神戸大は27年の入試までは一部科目の解答例をホームページで掲載していたが、翌年からは取りやめた。著作権の絡みで一部問題が掲載できず、全ての解答例を公表するのはバランスに欠くと判断した。
また、解答例公表をめぐる課題のひとつが、論述、記述問題など、多様な解答が想定できる場合の取り扱いだ。大学が解答例を示すと、受験対策によって、受験生たちが解答例に引き寄せられてしまうことになりかねない-という懸念があるという。
大学入試に詳しい桜(おう)美(び)林(りん)大の田中義郎教授(教育学)は「大学が本当に知りたいのは受験生の思考力や発想力。解答例を示せば、それが一人歩きし、解答へのプロセスが正しく計れなくなる」と述べ、非公開の大学に理解を示していた。
しかし、阪大と京大にミスを指摘していた東京の予備校講師、吉田弘幸さん(54)は「大学は試験実施後の早い段階で解答例を示すべき。ミスがあっても指摘を受けやすくなる」としていた。