今年に懸ける 公務員アスリートたち

(4)

 □熊谷市役所・400メートルハードル加藤誠也さん(25)

 ■仕事と競技両立、五輪へ全開

 「仕事と競技の両方を同時に続けられていることに感謝したいです」

 熊谷市教育委員会社会教育課生涯学習係に所属する2年目。成人式の企画を2年連続で担当した。「参加率も合格点をもらえ、今はほっとしています」

 旧大宮市出身。子供の頃からかけっこでは無敵を誇った。中学3年時に出場した全国大会では、4種競技(110メートルハードル、走り高跳び、砲丸投げ、400メートル)で優勝。県立松山高時代に400メートルハードルに本格的に取り組み、短期間にもかかわらず1年からインターハイに出場し7位。その後、2年で3位、3年で優勝した。

 スポーツ推薦で筑波大に進学しても記録の更新は止まらない。大学4年時に出場した日本インカレでは2位。「加藤誠也」の名前は多くの実業団に知れ渡り、和歌山県でスーパーを展開するオークワに満を持して入社した。

 ◆「何か違う」

 「競技一本で自分の思い通りに練習できる」。そう思って和歌山行きを楽しみにしていたが、いざ練習を始めると日に日に「何か違う」と思うように。「人のために走っているような気がして、練習に気持ちが入らなくなりました」

 もんもんとした日々を過ごしていると、偶然、熊谷市役所のスポーツ枠職員の募集を見つける。

 「これだ!」

 同市は平成31年開催のラグビーワールドカップの開催地の1つ。スポーツと観光に力を入れようとしていた。「自分には仕事しながら陸上を続ける方が向いている」。体が熱くなった。

 第1回の募集には若干名のところ60人が応募。「熊谷市で陸上をやって、競技者として熊谷をアピールできます!」。面接でそう訴えた。結果は見事に採用。20倍の難関を乗り越えた。「ここからが本当のスタート。仕事も競技も真剣に取り組んでいく」。23歳の転職だった。

 スポーツ枠で採用された職員はこの2年で計5人。その中で唯一、競技を続ける。仕事が終わると、まっすぐ帰宅。そこから車で30分かけ、群馬県太田市の競技場で練習を重ねる。

 ◆練習相棒は妻

 練習の相棒を務めるのは、昨年7月に結婚した妻の美弥子さん(25)。バランスの良い食事をつくるため、栄養士の資格を取得。「本当に『二人三脚』でやっています。妻には感謝しかありません」

 実は、昨年5月に右足の大腿筋の肉離れを起こしていた。「明らかにフォームがバラバラだった。特に後半が猫背になってしまい、記録が伸び悩んでいました」。肉離れを機に、フォームの矯正を始めた。

 「猫背になってるよ!」。厳しくも優しい美弥子さんの声が競技場に響き渡る。「時間をかけてフォームを見直して、ようやく形になってきた」。手応えを感じ始めている。

 400メートルハードルの日本代表クラスのタイムは48秒後半。対して自己ベストは大学時代に出した50秒34。「正直まだ差はある。まずは50秒を切りたい。そうすれば49秒5の壁も見えてくるはず」

 そこまで行けば、当然東京オリンピック出場の目も出てくる。「今年は飛躍の1年にする。そして妻と熊谷市に結果で恩返ししたいですね」(大楽和範)

                   ◇

【プロフィル】加藤誠也

 かとう・せいや 旧大宮市(現さいたま市)出身。25歳。178センチ、74キロ。県立松山高、筑波大を経て、オークワ入社。28年熊谷市役所入庁。400メートルハードルのベストタイム50秒34は、大学4年時に日本インカレの予選で出した。

会員限定記事会員サービス詳細