米国のトランプ大統領の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)についての新たな言明が世界に激震を広げた。スイスでの世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)での1月26日の演説で大統領はそれまでのTPP拒否の立場を一転させ、復帰の意図があることを明確にしたのだ。
「米国はTPP加盟の諸国とも互恵の2国間貿易合意を交渉する用意がある」
「TPP加盟の数カ国とは合意があるが、その他の加盟国とも個別あるいは集団での交渉を考える」
それまでの同大統領のスタンスを知る側にはびっくり仰天の逆転である。だが彼がつい口を滑らせたとは思えない。この演説は世界の政財界リーダー向けに事前に準備されていた。しかも大統領はその前日、米国のCNBCテレビのインタビューでもTPPについてはっきり復帰の意図ともいえる同趣旨の発言をしていたのだ。
トランプ政権は明らかに政策の変更としてTPPへの復帰や再交渉を試みる方向へと動いてきたのだ。もちろん米国のその切り替えは簡単ではない。だがトランプ政権はこの時点でなぜTPP政策を逆転させるにいたったのか。
この疑問への現時点での最有力な答えはトランプ政権の国際通商・財政担当のデービッド・マルパス財務次官がトランプ演説直後に述べた説明である。
「TPP政策のシフトの理由はここ1年間に起きた状況の変化だが、最大の要因といえるのは中国の経済的侵略がグローバル規模で激しくなったことだ。トランプ政権としての中国の略奪的な経済慣行へのより深い理解が、TPPの効用を再認識させるにいたったといえる」