■来館者減少、施設老朽化で決断
銚子市犬吠埼の水族館「犬吠埼マリンパーク」は29日、来館者の減少や施設の老朽化を理由に今月31日で閉館すると発表した。前身の銚子市水族館(昭和29年7月開館)から63年半。観光客や地域の子供たちに親しまれた人気スポットの突然の幕引きに、驚きと惜しむ声が相次いだ。
水族館の運営会社「犬吠埼マリンパーク」の平林良吉会長によると、東日本大震災後の風評被害などで平成23年以降は来館者数が激減。ピーク時は年間30万人を数えたこともあったが、現在は4万〜5万人にまで落ち込んだという。
こうした中、建物の耐震化工事や老朽化した設備を更新するための資金繰りのめどが立たず、今月31日での閉館を決めた。同社の平林弘充社長は「ボイラーなどは限界に来ている。万が一の事故でお客さまを危険な目に遭わせることはできない」と決断の理由を明かした。
銚子市などによると、現在の水族館施設は昭和49年に建てられた。館内には銚子近海に生息する魚など230種類、2500匹を展示。プールの間近で見られるイルカのショーを目玉に、アシカやアザラシのショーが人気を集めた。4頭いたイルカは現在、雌のバンドウイルカ1頭だけになってしまい、この1頭も体調不良のため昨年12月からショーを中止している。
閉館後、こうした生き物たちはどうなるのか。平林会長は「当面はこれまで通り、飼育員が24時間体制で世話を続ける。ほかの水族館に譲るため、これから同業者に声をかけていく」と話した。
水族館の元飼育員で、現在は銚子沖でイルカ・クジラウオッチング船を運航する民間会社、銚子海洋研究所の宮内幸雄所長は「閉館が決まったという話は、きのう(28日)聞いたばかり。本当に電撃的だった。寂しいことだし、銚子の観光にも大きな影響を与えるだろう」と話している。
しかし、それ以上に宮内所長は「生き物の行き先を早く決めてやらないと」と心配する。日本動物園水族館協会(JAZA)が加盟施設に対し追い込み漁で捕獲したイルカの入手を禁止している背景もあり、「イルカの引取先は見つかるかもしれない。ただ、ほかの魚は相手方の需要や移送コストを考えると、おいそれとは決まらないだろう」と行く末を案じた。
同水族館は、市内や近隣から園児や小学生、身障者らを無料招待するボランティアを約30年間続けるなど、地域に根ざした存在だった。千葉市の会社員の女性(39)は「小さい頃に行ったときは、にぎやかな場所だった。母になってから子供たちを連れて行ったこともある。イルカショーでジャンプした後の水しぶきに長男がとてもはしゃいでいた」と思い出を語る。そして、「ずっとあるものだと思い込んでいたので、ここ数年は忘れかけていた。もっと応援すればよかった」と寂しそうに話した。
銚子市の越川信一市長は29日、「市民や多くの観光客に親しまれてきた犬吠埼マリンパークの閉館は非常に残念。今後のことは会社から詳しい話を聞いていないが、観光の中心、犬吠埼にある施設として活用されることを望む。行政として、できる限り協力したい」とのコメントを発表した。