自民の地方組織にほころび 首長選で連敗続き 九州・山口

福岡県太宰府市長選で初当選した楠田大蔵氏(中央)
福岡県太宰府市長選で初当選した楠田大蔵氏(中央)

 自民党が全国の首長選で苦戦している。九州・山口だけでも28日投開票の福岡県太宰府市と宮崎県延岡市の市長選で、与党が推薦する候補が敗れた。21日投開票の福岡県久留米市長選では、自前の候補を立てることすらできず、太宰府市とともに、旧民主党の元国会議員に当選を許した。自民党の地方組織にほころびがみえる中、安倍晋三首相(党総裁)が目指す憲法改正を危ぶむ声も出始めた。(村上智博)

 太宰府市長選はごたごたが続いた。

 前市長が市議会から2度の不信任決議を受け失職した。自民、公明両党は前市教育長の木村甚治氏(64)を推薦した。これに対し、元衆院議員、楠田大蔵氏(42)が立候補すると、前市長は「楠田氏に一本化する」として不出馬を表明した。楠田氏は太宰府市を含む衆院福岡5区を地盤とし、比例復活を含め民主党公認で3回当選した。

 一騎打ちの選挙は楠田氏が制し、自公の推薦候補は敗れた。

 自民党の原田義昭衆院議員(福岡5区)は「何度も国政選で渡り合ってきた楠田氏の知名度の高さを、組織力では越えられなかった。つかみどころがない無党派層の票をつかめなかった」と肩を落とした。

 一方、延岡市長選では自民党延岡支部が元県総合政策部長、永山英也氏(60)を推薦し、公明、民進両党も同調した。

 与野党相乗りだったが、選挙戦は、無所属新人で元内閣参事官、読谷山(よみやま)洋司氏(53)が勝利した。

 読谷山氏は平成28年参院選では民進、社民の両党推薦を受けた。結果は落選だが、知名度は向上した。

 太宰府市の楠田氏、延岡市の読谷山氏とも、国政選挙を通じた知名度を活用した半面、政党色は一切出さなかった。

 これに対し自民党は、組織をフル稼働させたといいながら、及ばなかった。

 延岡市長選で、自民党は支持基盤であるはずの農協票を、まとめることができなかった。永山氏は県幹部時代の平成22年、家畜伝染病の口蹄疫(こうていえき)対応への責任者だった。「県対応へのわだかまりが尾を引き、農協などの支援は期待したほどではなかった」(自民党県連幹部)という。

 地方の自民党にとって苦しい状況は続く。福岡県でみると昨年2月の福津市長選、同4月の小郡市長選で県連推薦候補が敗れた。

 「不戦敗」に甘んじるケースもあった。久留米市長選で自民党は自主投票を決めた。だが、一部の国会議員や地方議員は、元民主党参院議員の大久保勉氏(56)を支援した。

 自民党福岡県連の松本国寛幹事長(県議)は「党として主体的に候補を選び、支持者に理解してもらう組織力が欠けていた。地域の実力者である村長(むらおさ)が『自民でいく』といえば、全員が一定の方向になびく時代は終わった」と語る。

 かつて自民党は、地方の隅々まで根を張る組織を、力の源泉としてきた。だが、市町村合併による議員の減少など、地方の政治環境は大きく変わった。地方議員は自身の選挙が精いっぱいで、無党派層までは手を伸ばしきれない。

 自民党を支援してきた団体にしても、「選挙に勝たねば仕事を干されてしまう」といった感覚は薄らいでいる。

 全国的にみれば、岐阜市や沖縄県南城市の市長選で、いずれも旧民主党の衆院議員の経験がある候補が当選した。福岡県連のあるベテラン県議は「安倍政権一強が続く以上、地方の首長選くらいは野党色が濃くても支援し、バランスを取ろうという日本人ならでは心理もある」と語った。

 福岡5区の原田氏は「(太宰府市長選の結果)足腰を鍛え直すべきだと反省した。組織力に頼りながらも、イメージ戦略を練り直す必要がある。メディアを通じて明確に、丁寧に党の政策を世に問う『空中戦』も大切だ」と語った。

 安倍自民党は昨年の衆院選で、国政選挙5連勝を達した。だが、野党の分裂など「敵失」に助けられた側面もあり、自民党の地方組織は盤石どころではない。

 こうした状況は、憲法改正にも影響しかねない。

 自民党は党改憲案の作成を進め、3月の党大会で公表した上で、衆参両院の憲法審査会へ提示する。

 改憲には国民投票で過半数の賛成が必要だが、特に9条改正には、多くのマスコミが反対の論陣を張ると予想される。憲法改正を党是とする自民党の地方組織は、国民の支持を得るため、啓発活動を展開する必要がある。

 同党の加地邦雄福岡県議は「どんな逆風が吹こうとも、常に勝てる組織をつくってこそ、憲法改正は実現できる。国民投票で過半数割れしないためにも、地方組織にほころびがあってはいけない」と語った。

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