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奈良県特産の黒毛和牛「大和牛(やまとうし)」の知名度をなんとか上げようと、県がPR活動に本腰を入れ始めた。一昨年には全国的にも厳しい生産基準を独自に設定。大和牛は神戸牛や松阪牛など名だたるブランド牛に勝るとも劣らない品質を誇るまでに成長したが、県民ですらその存在を知らない人が少なくない。知名度アップの起爆剤はどこにあるのか。
限られる流通量
じゅわーっという食欲をそそる音とともに、フライパンから肉の焼ける香ばしい香りが漂ってきた。先月下旬、同県桜井市にある宿泊型フレンチレストラン「オーベルジュ・ド・ぷれざんす 桜井」に県議やマスコミ関係者らを招いて催された試食会。イチボ肉やフィレ肉、すね肉などさまざまな部位をステーキやローストビーフ、赤ワイン煮込みなど、肉質にあった方法でシェフが手際よく調理していく。細かくサシが入った肉は、焼けば甘みのある脂が口に入れた瞬間に溶け出し、煮込みはほろほろとやわらかく繊維がほどけていった。間違いなく、おいしい。
大和牛の歴史は古い。良牛を紹介する鎌倉末期の「国牛十図」には、奈良が「大和牛」の名とともに良牛の産出地域として紹介されている。当時は牛を食べる習慣がなかったため農耕用と思われるが、古くから優れた牛を育ててきた証だ。
肉牛としての大和牛は平成15年にブランド化された。現在は県東部の宇陀山地や大和高原などで14農家が飼育し、関西を中心に出荷している。柔らかい肉質とサシが入った霜降りが特徴だが、流通量が少ないこともあり、ほとんど知られてこなかった。