こうした問題を打破しようと、京大は21年にiPS細胞研究基金を設立。山中所長は先頭に立って支援を呼びかけ、研究者の待遇改善に力を注いできた。ノーベル賞の資金も、資金不足でスタッフを解雇せざるを得なくなった時のために貯蓄しておくとしていた。
その結果、28年度の寄付総額は約23億7千万円に達し、基金からの人件費支出割合も増やしてきていたという。しかし、今回、捏造と改竄が発覚した。
研究所では、不正防止に3カ月に一度、実験ノートを提出させ、内容を精査するなどしていたというが、不正は見抜けなかった。
助教の研究には基金から多くの寄付が投入されていたという。この日の会見でも、山中所長は「研究者は全員研究費の問題とプレッシャーを抱えている。防げなかったことに無力さを感じている」と唇をかんだ。