京大iPS論文捏造

非正規雇用多く組織基盤脆弱 背景に根深い研究者事情

iPS細胞に関する論文捏造で会見する山中伸弥所長(右から3人目)ら=22日午後、京都市左京区の京都大学(寺口純平撮影)
iPS細胞に関する論文捏造で会見する山中伸弥所長(右から3人目)ら=22日午後、京都市左京区の京都大学(寺口純平撮影)

 iPS研究をめぐっては非正規雇用が多いなど組織基盤が脆弱(ぜいじゃく)で、京大iPS細胞研究所の山中伸弥所長は待遇改善を訴え資金集めに奔走してきた。今回の捏造(ねつぞう)と改竄(かいざん)に手を染めた助教も任期付きの非正規雇用。背景には研究体制の根深い問題も見え隠れする。

 「これが民間企業なら、すごいブラック企業。何とかしないといけない」

 平成27年5月、奈良県内で講演した山中所長は、聴衆を前にこう訴えていた。山中所長によると、研究所のスタッフは約300人だが、うち非正規雇用は約9割を占めていた。

 なぜ、こんなにも非正規の割合が高いのか。それは国の予算措置などの特徴があると研究者は口をそろえる。多くの研究者は国からの予算に頼り、先端を走る京大のiPS細胞研究所でも28年度の予算約80億円のうち、約84%を国などからの「産学連携等研究費」に頼っている。

 ただ、この研究費は、期限内に使う必要があり、使途も指定されている。ノーベル賞候補ともされる、ある研究者は「人材が育たない土壌を生んでいる。期限を区切ると短期間で結果を出すことも求められ、あせりなどの弊害も出る」などと不正の温床になる恐れを指摘していた。

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