研究結果やデータの捏造(ねつぞう)や盗用など科学への信頼を揺るがす論文不正は、大学の教育現場や研究所で後を絶たない。
平成24年10月には東大病院の特任研究員だった森口尚史(ひさし)氏がiPS細胞を使った世界初の臨床研究で心不全患者を治療したと学会で虚偽の発表をしたことが判明。25年7月には京都府立医大が降圧剤ディオバンの臨床試験論文でデータ操作があったと発表し、論文は撤回された。
26年1月には理化学研究所の研究員だった小保方晴子氏らが、万能細胞のSTAP細胞を作ったと英科学誌ネイチャーに発表。発表後、疑問点が指摘され、理研の調査委員会は、論文の図表に捏造と改竄(かいざん)があったと認定し、論文は撤回された。早稲田大は小保方氏の博士号を剥奪(はくだつ)した。
同じ研究所で不正が繰り返されたケースもある。同年12月、東大は分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授の研究室で、教員や学生らの論文に不正があったと認定。同研究所では昨年8月にも、渡辺嘉典(よしのり)教授と元助教が20〜27年に発表した論文5本にデータの捏造と改竄があったことが発覚した。渡辺氏は分子生物学の第一人者とされ、近年はネイチャーなどの世界的な学術誌に論文を相次ぎ発表していた。