話の肖像画

京大霊長類研究所所長・湯本貴和(1)世界で一人だけの景色を見たい

大学院の博士課程のとき、当時はまだ知る人ぞ知る島だった屋久島(鹿児島県)で2年半、照葉樹林の研究を行いました。島には、ヤクシマザルを研究していた霊長類学者たちもいて、そこで彼らとのつながりができたのです。やがて、その一人だった、山極寿一(やまぎわ・じゅいち)さん(現京大総長)に誘われ、アフリカのザイール(現コンゴ)でゴリラを研究するチームに加えてもらいました。

〈アフリカのほか、コロンビア、マレーシアのサラワク州(ボルネオ島)など、世界中の熱帯林に長期間住み込み、研究にいそしんだ〉

何しろ、私のようなテーマは他にやっている人がほとんどいない。「植物」が専門で、霊長類学者のライバルにもならないから、どんどん他の研究チームからも、お呼びがかかるようになった。一時は霊長類学御用達と呼ばれたくらいです。

熱帯林の面白さは、他の地域とは比較にならないほど多様な生物がいることですね。今まで知られていない花や果実に来る動物を見つけることがある。「ああ、世界でこの景色を見ているのは自分だけなんだ」と思うとゾクゾクしますよ。そんな瞬間を経験したことが何回かあります。実生活でギャンブルはしないけど、大穴を当てたときはこんな気分なのか、なんてね(笑)。(聞き手 喜多由浩)

【プロフィル】湯本貴和

ゆもと・たかかず 昭和34年、徳島県生まれ。京都大学理学部に進み、京大大学院理学研究科博士後期課程修了(理学博士)。専門は生態学。京大生態学研究センター、総合地球環境学研究所などを経て、平成24年に京大霊長類研究所教授、28年からは同所長に就任。主な著書に「屋久島 巨木の森と水の島の生態学」「熱帯雨林」など。新刊は「世界で一番美しいサルの図鑑」(全体監修・著)。

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